You-学舎は、大阪(茨木・南茨木・千里山)、京都(西院・太秦)の個別指導・学習塾です。

【大学入試】センター古文を楽しむ!2010恋路ゆかしき大将〜センター史上最大の問題作!?

 大学受験関連

とうとう2010年度の恋路ゆかしき大将を読み解く日がやってきてしまいました……。センター試験最大の問題作と言われています。きちんと読もうとすればするほど混乱し現代語訳を読んでも意味が分からず「は?何言ってんの?」という気持ちになります。過去問演習をするときにもこの年の問題に関してだけは、いわゆる受験テクニックを練習するための問題として活用していただきたいくらいです。ただ共通テストの方向性を考えると、受験テクニックだけでは太刀打ちできない問題が増えていくのではないかと思いますし、恋路ゆかしき大将にも真正面から取り組んでみたいと思います。

基本情報

恋路ゆかしき大将は、鎌倉時代に書かれた物語です。ただし舞台は平安時代。今も昔も、少し古い時代にあこがれるものなんですね。ネット小説に、近世ヨーロッパを舞台とした話があふれているのと同じです。ちなみに、擬古物語といいます。

 

おもな登場人物

恋路

浮いた話のない堅物で知られていた真面目な人なんですが、そんな彼が恋したのは11歳の少女だったというのが大問題。それでも、周囲に祝福されたのは彼の人柄ゆえなのかもしれません。

右大将とは

ちなみに物語の始まった当初、彼は右大将という職についていたんですが、右大将というのは右近衛府の長官です。右近衛府と言えば平安京内の警備にあたる重要な職です。その長官に数え25歳で就いているわけですから、かなりのエリートですね。実際の右大将には40代、50代になってから就任する人が多かったようですが、20代で右大将を務めた人もいます。恋路は、物語中でスピード出世していき、最終的には太政大臣ます。

貴族へのあこがれ

鎌倉時代といえば、朝廷の権威は弱まり貴族社会は遠い昔になっていました。若くして要職に上り詰めたエリート貴族に対する憧れもあったのかもしれません。

恋路大将の恋

右大将は帝の幼い娘、女二宮(姫宮)に恋をします。右大将が女二宮(姫宮)を見初めたとき、女二宮(姫宮)はなんと11歳!今だったら犯罪ですね。捕まります。ただし平安時代の成人は12歳ですし、有名な源氏物語でも光源氏は最愛の妻となる紫の上を13歳〜14歳の時に見初めて手許に置こうとしたことを考えると……めちゃくちゃ変わっていたとも言えないのかもしれません……。

恋の行方は

女二宮(姫宮)の父親である帝のアシストもあって紆余曲折を経て恋は叶います。二人の間には子供も生まれ周囲にも祝福されて幸せな結婚生活を送ります。二人の年齢差やセンター出題箇所だけを読むと拒否感を感じるのも仕方ない話に聞こえるんですが、恋路大将の真面目な人柄もあって物語内ではまあまあ好意的にふたりのことは受け入れられています。

皇女の降嫁は大変

平安時代、天皇と血縁関係のある皇女には恋愛や結婚の自由がありませんでした。皇女の生んだ子供が権力争いや政争の種になってしまいますからね。ほとんどの皇女は未婚のまま天皇家ゆかりの神社で巫女を務めたり、出家して表舞台には立たないようにしていました。恋路との恋を叶えて降嫁した女二宮は特例中の特例です。

端山・花染

恋路大将の友人兄弟ですが、そうとは思えないくらいの遊び人です。端山というのは「山の端まで歩き回り訪れぬ場所がないほど誰にでも手を出す」ことからついたあだ名で、花染は「花の色が移り行くように、移り気である」ことからついたあだ名だというから相当です。恋路、端山、花染の会話中でもふたりの恋話がよく話題にあがりますが、まあダメ男です笑

ふたりの出生は

父親は太政大臣でしたが、正妻が亡くなった後出家しました。端山と花染の母親は、その後帝の側室(藤壺の女御)になりました。父親が出家し母親は帝に嫁ぎ、頼れる人のいないふたりを帝は実の息子と同じように育ててくれました。実はこの物語は、兄弟ふたりが出家した父親に会いに行く場面から始まります。題名は「恋路大将」ですが、端山、花染のふたりの恋愛も丁寧に描かれています。

帝は恋路大将を寵愛していました。恋路大将への寵愛は、傾国の美女として有名な楊貴妃へのに喩えられるほどです。また端山と花染の母親(藤壺)に子どもの頃から恋心を抱いていたので、藤壺の夫である太政大臣が出家してすぐに、藤壺、端山、花染を手元に引き取り大切にしていました。

世話焼きな帝

恋路の世話を焼き、初恋の藤壺がバツイチになっても思いを貫き、血のつながらない端山と花染を引き取って育てるとは、他の物語には見られないような寛容で世話好きな面のある帝だと思いませんか?フィクションですが、帝への親近感を抱いてしまいますよね。ただ恋路の、幼い我が子への恋を受け入れるのは寛容過ぎる気がしますが…。

帝は悪趣味?

恋路に言わせると、帝は寛容なのではなく不道徳なことを好む悪趣味なところがあったようです。また、恋路に対しては寵愛を通り越して少し歪んだ愛情を持っているようにも見えます。

 

あらすじ

主人公は恋路、端山、花染の三人です。特に深く語られるのは恋路と端山についてです。ここで三人の恋の話をすべて語ると長くなってしまうので恋路を中心にお話しますね。

センター出題箇所以前
恋に興味のない恋路と遊び人兄弟

帝と縁近くそばに仕えることの多かった三人は自然と仲良くなったようです。恋路自身は女性に無関心でしたが、三人集まると自然と恋の話になり、端山、花染のしょうもない恋バナを楽しんだり、恋路の真面目さをふたりがからかったり、仲良く過ごしていました。恋路は帝だけでなく周囲からの評価が高く、上司からの縁談で仕方なく正室を娶りました。しかしどれだけ評判の良い優れた女性でも恋路はピンと来ません。

恋路の憧れの人は?

そんな恋路が心ひかれたのは藤壺でした。藤壺といえば、友人の端山、花染兄弟の実母であり、帝の側室です。普通なら帝以外の男性に姿を見せることのない深窓の奥様ですが、帝のイタズラで恋路は藤壺と対面します。あまりの美しさに、藤壺に会ってしばらく恋路の心は藤壺のことでいっぱいになってしまいます。

帝に秘密にしたい恋

当然、藤壺への思いを帝に知られたくはありません。しかし帝にはすべてがばれていました。帝は悪趣味なことに恋路を藤壺と再び引き合わせようとします。センターの出題は恋路が帝に会いに行くところから始まります。

センター出題箇所は…

恋路大将が初めて女二宮(姫宮)を見かける場面です。女二宮(姫宮)が子供らしい人形遊びをしているんですが、その人形遊びのせいで本文のレベルがセンター史上稀にみる高難度になってしまったといっても過言ではありません。

二宮は二人いる

そしてもう一つ注意しないといけないのが呼び名です。センター出題箇所では、女二宮は姫宮と表記されています。「二宮」も登場するんですが、それは姫宮の兄弟のことです。二宮とは単に帝の次男、次女の呼び名です。男二宮とあれば次男、女二宮とあれば次女ということなので、二宮とあるだけでは男女の区別がつきません。このページを読まずにセンターの問題だけを読んだ場合、「恋路大将が恋するのは姫宮で、二宮という別の登場人物がいる」という理解ができると思います。本文と照らし合わせて読みやすいよう、ここでは大将が恋する女二宮を姫宮、女二宮の兄弟を二宮と表記します。

藤壺に参上する恋路大将,遊ぶ子供たちを見かける

帝に会いに藤壺に参上する途中に、帝と藤壺の娘の姫宮と兄弟の二宮が数人の子どもと虫を見て遊んでいました。恋路大将はその様子を偶然見かけます。二宮が家来に御簾を上げさせているので、部屋の中にいる姫宮が恋路大将の視界に飛び込んできました。姫宮まだ幼い少女でありながら藤壺以上の美しさと上品さを持っていました。どうやら姫宮と二宮は、人形の家について話しているようです。その内容が、「人形の家に虫を入れたらどうかしら?」「苔も入れたらもっといいよ!」というもので、受験生を恐怖と混乱に陥れました。

姫宮の笑顔に落ちた恋路大将

二宮の発言に微笑む姫宮の笑顔が恋路大将の心を直撃し、恋路大将は一気に心を奪われてしまいます。姫宮が幼すぎることは恋路大将も承知していて、恋というよりも癒しを感じていたようです。あの笑顔ならいくらでも眺めていられる、という感情はもしかしたらアイドル好きには理解できるかもしれません。ただ「うちに連れて帰りたいなぁ…」という和歌を詠んでいるので、アイドル好きよりも一歩こじらせてますね。

唐突な帝と恋路の和歌のやりとり

藤壺に参上すると、帝と藤壺がいらっしゃいます。あんなに憧れていた藤壺に再び会えたというのに、思うのは先ほど見かけた姫宮のことばかりです。そして恋路は唐突に、朝顔が毎朝咲き続けることに帝の繁栄を例えた和歌を詠みます。今度は帝が「長く生きるという松に例えられるほど、朝顔の盛りの美しさは永久のものだ」と、恋路の美しさを朝顔に喩えて歌を返します。読者にとっては唐突すぎる流れですが、帝は恋路のことを寵愛しているので二人にとってはこのような歌のやり取りはいつものこと(?)なのかもしれません。まさか帝から恋路に美しさを讃える和歌が送られるとは思わず、正誤問題で爆死した人も多いのではないでしょうか?

恋路、女二宮に貢ぐ

大好きな姫宮に喜んでもらうために、恋路は考えます。そしてひらめきました。女二宮が好きな人形遊びの家を贈ろうと。細工師を集めて人形と虫を一緒に入れられる家を作らせて、藤壺に「人からもらったですが、もし差し上げる人がいたらどうぞ」と言って贈ります。もちろん藤壺から姫宮に贈られることを期待してのことです。「松虫がこの磨き上げられた見事な家に住むように」(姫宮も華やかな宮中で永く栄えますように)という和歌も書きつけました。

恋心ばれる

帝と藤壺が人形の家を物珍しく見ていると、藤壺に仕える女房が「これは姫宮が欲しがっていたものです。この間、恋路大将が姫宮をじーっとご覧になっていたと人から聞いたんですが、嘘じゃなかったんですねー」と帝と藤壺に言ってしまいます。恋路大将の淡い恋心が姫宮の両親にばれてしまいました。

帝、恋路の恋を歓迎する

20代半ばの男が11歳の我が子に恋すると聞いたら普通は穏やかではないと思いますが、帝は一味違います。と言うのも、帝はこれまで幾度となく恋路大将に恋愛の世話をしてはなかなかうまくいかず心配していたからです。恋路大将が恋をしていることに気が付き、たとえ相手が幼い我が子でもうれしくなってしまったんです。

帝、恋路に返歌を送る

恋路の和歌に対して「あなたが磨いた家で松虫は永く栄えるでしょう」(あなたの家に姫宮を迎えなさい)という歌を返します。受け取った恋路は赤面して、すっかりその気になります。

恋路、自宅にも人形の家を作る

恋路は人形の家を贈っただけでなく、自宅にも人形の家を作り始めます。周りも引き気味になり、恋路自身も自分のしていることを馬鹿らしいと思いながらもやめられないなぁ…という和歌を詠んだところでセンターの問題文は終わります。

出題箇所のあと

この後、帝の取り計らいにより恋路は成人した姫宮(女二宮)といよいよ対面します。成人したとは言え幼い姫宮は恋路の家にある人形の家を気に入り、恋路の家に出入りするようになります。恋路は姫宮の成長を待ち、じっくりと恋を育てます。姫宮は恋路を煩わしく思うこともありましたが、いずれ二人は両想いとなり結婚しました。

恋路の浮気心

恋路はたった一度だけ浮気心を抱いたことがあります。しかし、姫宮(女二宮)のやきもちの様子を見て浮気心をすぱっと捨て去りました。その後は姫宮(女二宮)への愛情を失うことなくふたりは理想の夫婦として子どもにも恵まれ幸せに暮らしました。

端山と花染は?

端山と花染は、恋路と違って恋愛には苦しまされます。自業自得としか言いようがありませんが…。特に端山は女二宮の姉に恋をし両想いになりますが、皇后がその恋を許さず辛い思いをすることとなります。どうにか端山の恋は許されますが、物語の続きが失われていて物語の結末を知ることはできません。端山と花染はともかく、恋路と女二宮のふたりは末永く幸せに暮らしていてほしいですね。

読解ポイント

雛遊び

「雛」という言葉から連想されるのは3月3日にお雛様を飾る雛祭りですよね。しかし平安時代当時、雛遊びというのは子どもがする人形遊びを指していました。この頃の人形は、木や紙でつくった簡単なものです。お雛様や豪華な日本人形を想像すると虫と同じ家に入れるのは異様でますが、自然素材の素朴な人形を使っていたことを考えると、人形と虫の同居もありなのかもしれません。

雛遊びは子どもの遊び

源氏物語でも雛遊びは子どもの遊びであることを強調していますし、子どもっぽく可愛らしいものを指して「雛のようなかわいさ」と言う表現もあります。つまり雛遊びは子ども時代の象徴であり、恋路が女二宮を見初めたときには女二宮がまだまだ幼い子どもであったことを象徴しています。あえてそのような設定にしたのは、この物語が源氏物語を意識しているからだとも言われています。

和歌がポイント

今回、和歌の解釈が出題されました。受験生は、本文中の和歌にアルファベットが振ってあったのを見た瞬間テンションが下がったのではないでしょうか。センター出題箇所には全部で六首の和歌があります。そのうち1首目の和歌と最後の和歌は、恋路の独り言です。和歌は誰かに向けて送るものと思い込んでいると混乱したのでは?2首目は恋路から帝へ、3首目は帝から恋路への和歌です。帝から恋路への和歌は異性の恋人に送るような甘い内容で、これも受験生を混乱させた和歌の一つですね。4首目は恋路が藤壺に贈った雛の家に書きつけた和歌で姫宮の栄華を願った和歌、5首目は帝が恋路に贈った返歌で、恋路の恋を認める和歌でした。

まとめ

色々考察してみましたが、やはり恋路は当時としても少々年下趣味が行き過ぎていました。改めてセンター出題箇所以外を読んで恋路の好感度が上がったのでフォローしたかったんですが……残念です。問題集や過去問で正統派の文章を読みなれた受験生にとってはつらい出題だったのではないでしょうか。来年の共通テストからは果たしてどうなるか分かりませんが、幅広い古文に慣れ親しみ当時の風俗や慣習に少しでも馴染んでおきたいものですね。

 

この文は尾花が書きました。

 

この記事を読んでいる人はこんな記事も読んでいます。

【大学入試】センター古文を楽しむ!2009年一本菊〜美男美女は不幸が似合う!?

【大学入試】センター古文を楽しむ 2008狗張子〜江戸時代の人はホラー大好き!