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【大学入試】センター古文を楽しむ!2009年一本菊〜美男美女は不幸が似合う!?

 太秦教室

センター古文を楽しむ!シリーズ第4回の2009年は、『一本菊』。

『ひともとぎく』と読みます。

 

今回の主人公は…難しいところですが、出題範囲だけを見ると兵部卿の宮でしょうか。

兵部卿の宮…といえば、以前2007年のセンター古文にも出てきたことがありましたね。

 

でも、2007年の『兵部卿宮物語』に出てきた兵部卿の宮とは別人です。

兵部卿の宮というのは個人名ではなくて役職名ですよ〜という話を覚えていますか??

『一本菊』では、個人名がほぼ出てきません…。登場人物のほとんどが役職名で呼ばれます。

ん〜、ややこしい…。

 

登場人物

兵部卿の宮の復習、紹介から行きましょう!

 

名無しの皇子、兵部卿の宮

兵部卿の宮といえば、帝に非常に近い皇族の男子を指します。

兵部といえば、今の自衛隊、いわばこの当時の軍隊です。

その軍の最高責任者である兵部卿の宮を任されているのは、皇族の男子だったんです。

 

さて今回の兵部卿の宮。

一体、どのような方かというと…

帝の弟で、とても優秀な方で、とても情の深い方だったようです。

 

兵部卿の宮と呼ばれる皇子様って、情の深い方が多いような気がしますね。

実は、その通りなんです。

 

帝の弟が兵部卿の宮を務めることが多かったようなんですが…、

(というか、物語の中での兵部卿の宮が帝の弟であることが多いんですが…、)

日本人って、「帝」本人よりも、美しく優しい優秀な「帝の弟」がその境遇ゆえに苦労し、やがて成功するシンデレラストーリーが大好きなんですよ。

(かの有名な『源氏物語』の主人公の光源氏も、帝の弟です。)

 

美しく優しく優秀なスーパーヒーロー兵部卿の宮が活躍する物語が好まれているというわけです。

今作の兵部卿の宮も、ちょっとダメなところもあるけれど、不幸な兄妹を救うスーパーヒーローです。

 

そんな兵部卿の宮が日頃かわいがっていたのが兵衛之佐です。

 

名無しの上級貴族、兵衛之佐。

「兵衛」との呼び名からわかるように、「兵衛府」という役所の役人です。

「佐」というのは役職名。

「督」に次ぐ第2位の役職なので、この役職についている時点で結構上級貴族である、ということがわかります。

 

この『一本菊』に出てくる兵衛之佐も、亡くなった父親が右大臣であるという上級貴族でした。

兵衛之佐本人も、文武ともに優れており宮中に並ぶものがいないという高い評価を得ています。

 

ただし実母を早くに亡くし、父親が再婚してからは継母と義母弟妹に追いやられてしまいます。

実母妹とふたり肩身の狭い思いをしていました。

 

更に、頼りにしていた父親までもが亡くなり後ろ盾のない兄妹は、非常に苦労していました。

あまりの世知辛さに、兵衛之佐はいっそのこと出家したい!という気持ちを妹のために抑えて暮らしています。

 

継母にいじめられる美女、妹姫

兵衛之佐の妹は、絶世の美女として知られていた母親譲りの美少女です。

 

兵部卿の宮に求愛されるも、それを妬んだ継母の『播磨の三位』に罠に嵌められて、仲を引き裂かれてしまいます。

この求愛をきっかけに、兄の兵衛之佐と妹姫の人生は継母の策略によって大きく揺れ動きます。

 

いわゆる『継母物語』と言われる人気ジャンルの一つです。

大体、意地悪な継母が前妻の子どもをいじめてひどい目にあわせようとするんですが、最終的に企みは失敗して継母自身がひどい目にあう、というのが大体のストーリーです。

 

今作の『継母』もかなりの悪人です。

 

根っからの悪役親子、播磨の三位(継母)、四位大将(息子)、そつの局(娘)

播磨の三位は、兵衛之佐と妹宮の父親である右大臣の後妻です。

 

四位大将は兵衛之佐と違って能力のないバカ息子です。

しかし、播磨の三位が帝の乳母だったために帝の乳兄弟として重用されていました。

帝も悪い人ではないんですが、四位大将の言うことを鵜呑みにして兵衛之佐兄妹を窮地に追いやってしまうんです…。

 

そつの局は、良くも悪くも登場回数が少ないので人となりはよくわかりません(笑)

母親の播磨の三位とよからぬ相談をしているので、「いい子」ということはなさそうですが…。

 

侍従の内侍

兵衛之佐の恋人。大納言のお嬢様です。

宮中でも評判の美女だそうですが、兵衛之佐といい、妹姫といい、美男美女だらけの物語ですね…。

 

侍従の内侍というのは、天皇や皇后、皇女に仕えて身の回りのお世話をする仕事です。

大納言のお嬢様が就くようなお仕事でもないんですが、物語なのでそういうこともあるのでしょう。

 

実際は帝の身の回りのお世話をしているうちに、お気に入りになって玉の輿に乗るようなこともあったそうですが、一本菊に登場する侍従の内侍は、帝のみならずどんな殿上人の誘いにもなびかず、兵衛之佐を思い続ける一途な女性だったようです。

あらすじ

不運の美形兄妹

兵衛之佐と妹姫は右大臣が父、皇女が母という恵まれた家庭に生まれた美形の兄妹でしたが、母を早くに亡くした後に父右大臣が播磨の三位を後妻に娶り、転落が始まります。

 

父である右大臣が生きている間は、兵衛之佐、妹姫のことを見守ってくれていました。

ところが、父が亡くなり播磨の三位が家を仕切り始めて兵衛之佐と妹姫は表舞台から追いやられてしまいます。

本来であれば、父右大臣を兵衛之佐が継ぐべきところを、播磨の三位の実の息子である四位大将に奪われてしまうんです。

 

兵衛之佐は嫌気がさして出家したいと思い悩んでいますが、妹姫のために我慢をしています。

 

そんな兵衛之佐のことをかわいがっているのが、帝の弟の兵部卿の宮です。

 

兵部卿宮、恋をする

ある日、兵衛之佐は兵部卿宮主催の宴で菊を献上します。

その菊は、父右大臣が育てていた菊で父の亡くなった後も妹姫が大切にしていたものでした。

 

兵部卿宮はそのエピソードトークで妹姫に興味を持ちます。

加えて、お兄ちゃん(兵衛之佐)がこんなにかっこいいんだから、妹は絶対美人に決まってる!という思い込みから、すっかりその気になってしまいます!

 

行動力も抜群の兵部卿宮は早速妹姫に和歌を届けます。

和歌を送り届ける役目を仰せつかったのは、御随身の常盤です。

常盤くん、若いけれども気の利く兵部卿宮お気に入りの従者で、この後も大活躍をします。

 

常盤は、兵衛之佐と妹姫の住まいに和歌を届けます。

兵衛之佐の家の女房たちは、妹姫に見せる前にまず兵衛之佐に和歌を見せに来ます。

和歌には名前が書いてありませんでしたが、兵衛之佐は字を見て兵部卿宮からの和歌だと見抜きます。

いつどこで、兵部卿宮が妹姫を見初めたのか不思議で仕方ありませんでしたが、願ってもいないチャンス!

必ず返事をするように指示します。

 

ところが、妹姫は返事をしません。

 

当時、届いた和歌にすぐ返事を出すのは無粋とされていたんです。

すぐに返事するとがっついていると思われたのかもしれませんね。

 

兵部卿宮もそれはもちろん覚悟の上のこと。

その日のうちに、もう一通常盤に和歌を届けさせて今度は名乗りを上げさせます。

 

しかし、妹姫はまだ返事をしません。

兵衛之佐に「返事をするように」と言われているはずなのですが…。

 

この件については残念ながら詳しい記述はありません。

二人の継母である播磨の三位の差し金で妹姫まで和歌が届いていなかった可能性もありますし、妹姫が恋愛にまだ興味を持っていなかった可能性もあり、どちらとも言えないんです…。

私個人としては、播磨の三位の妨害工作だと面白いと思いますが、そうであればそのように記述があるような気もします。

 

返事がないなら…

さて、妹姫から返事をもらえない兵部卿宮はすっかり弱ってしまいます。

「返事ももらえないし、みっともないし、もうやめようかな」と悩むけどなかなか踏ん切りがつかず、うじうじと悩みます。

 

そんな兵部卿宮を見てとんでもない提案をしたのがスーパー御随身の常盤!

「返事がもらえないなら、直接会いに行ったらどうでしょう?夜なら忍び込めますよ!」

と、兵部卿宮に夜這いを勧めます。

 

そして兵部卿宮は常盤の言葉に背を押され、妹姫の寝所に忍び込みます。

 

…というところまでがセンター出題箇所。

先が気になりますよね??

 

片思いは、成就?…でも。

妹姫の寝所に忍び込んだ兵部卿宮が見たのは、女房に守られた美しい少女。

兵部卿宮は、妹姫にすっかり夢中になってしまいます。

 

妹姫も兵部卿宮を受け入れ、兵部卿宮は日を置かず妹姫を訪れる日々。

平和で幸せな日が続きます。

 

ところが、これでめでたしめでたし、とならないのが継母物語。

兵部卿宮が毎夜妹姫を訪れていることは、播磨の三位(兵衛之佐と妹姫の継母)の耳に入ります。

 

播磨の三位は、兵衛之佐と妹姫が引き立てられて、自分の息子、娘よりも出世するのが許せません。

 

罠にはめられた兵衛之佐

播磨の三位と息子の四位大将は、帝の乳母、乳母兄弟であることを利用して兵衛之佐を罠にはめます。

「兵衛之佐に夜道で襲われた」と訴える四位大将の言葉を帝が信じたために、兵衛之佐は島流しになってしまいます。

 

播磨の三位は、兵衛之佐さえいなくなれば妹姫のことはどうとでもできると思ったんです。

 

兵衛之佐は嘆き悲しみます。

兵衛之佐にもお付き合いしている女性がいたので、彼女と涙のお別れをして、兵部卿宮に妹姫の後のことを頼みこみ、泣く泣く都を離れます。

眉目秀麗な兵衛之佐は宮中でも人気があり、彼が無実の罪で島流しになったことに周囲の人は悲しみますが、帝の決定は誰にも覆せません。

 

姿を消した恋人たち

兵衛之佐がいなくなった都では、播磨の三位が早速動きます。

妹姫を、自宅から連れ出して手下の家に監禁してしまうんです。

手下は、妹姫を殺すように命令されていましたが、妹姫のあまりの美しさに殺すことができず、監禁生活は長くなるばかりです。

 

妹姫が姿を消し、慌てたのは兵部卿宮。

播磨の三位にも尋ねますが、嘘をつかれて妹姫の消息はわからなくなってしまいました…。

 

兵部卿宮を慰めるために行われた宴で、兵衛之佐の彼女、侍従の内侍に出会います。

お互いに恋人を奪われた兵部卿宮と侍従の内侍は急接近します。

 

実は、侍従の内侍も相当の美女。

兵部卿宮が、内侍の侍従の美しさについては妹姫に黙っておこうとこっそり心に誓うほど(笑)

 

ふたりの接近が面白くないのが播磨の三位。

ようやく妹姫がいなくなり、兵部卿宮がフリーになったので娘のそつを売り込もうと思っていたのに、内侍の侍従がいてはうまくいきません。

 

そこで、内侍の侍従を勝手に四位大将の結婚相手候補にしてしまいます。

 

内侍の侍従はその話を聞いて驚きます。

そして、驚異の行動力で親にも黙って都を飛び出し島流しになった兵衛之佐に会いに行きます。

内侍の侍従は無事に兵衛之佐に出会うことができます。

 

実は、兵衛之佐は島流し先でも丁重に扱われ不自由のない生活を送っていたので、内侍の侍従が来てくれてそれはそれで幸せだったかもしれません。

気がかりは妹姫のことだけです。

 

大逆転!

さて、妹姫は相変わらず女房とふたり、播磨の三位の手下の家に監禁されています。

どうにか抜け出せないか、手下の娘を手なずけたり、策を練りますがなかなかチャンスが訪れません。

 

そんなある日、外から耳慣れた声が聞こえてきます。

それは偶然そばを通りかかった常盤のものでした。もちろん兵部卿宮も一緒です。

 

千載一遇のこの機会を逃すはずがありません。

兵部卿宮は、妹姫を救出!

 

ここからは、兵部卿宮のターン。

息子のいない兄帝から、帝位を譲られると、すぐに兵衛之佐と内侍の侍従を都に呼び戻し、播磨の三位、四位大将、そつを都から追放します。

 

兵部卿宮は帝になり、妹姫との間に生まれた息子と、兵衛之佐と内侍の侍従の娘とやがて結婚し、みんな幸せに暮らしたとのことです。

 

まとめ

いかがでしたか?

長ーいお話ですが、登場人物の気持ちや言動がいきいきと描かれており、魅力的な物語です。

 

特徴は、御付きの者の活躍が描かれていること。

ここには書ききれませんでしたが、兵部卿宮の御随身や、妹姫の女房だけでなく、

兵衛之佐の御付きや内侍の侍従の乳母が大活躍して、主人を助け大逆転に導く物語は読んでいて気分爽快になれること間違いありません。

 

 

2007年のセンター古文から独自解説をしています。

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