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【大学入試】センター古文を楽しむ 2007兵部卿物語〜皇子の秘密の恋

 大学受験関連

センター古文の解説を読んでもスッキリしないことは、ありませんか?

 

本文の現代語訳も理解できたし、問題で間違えたところはわかった。

でも、結局何の話だったのかよくわからない…なんてことがセンター古文では起こりがちです。

 

なぜかというと…センター古文は、長ーい物語の一部だけを抜粋して出題されることが多いからなんです。

 

長編の一部分だけをちょっと読んでも、ストーリーがわかるはずありません。

現代文でも状況理解に苦しむことがあるのに、古文の場合は登場人物や場面、状況を把握するのも難しいですし、問題として抜粋される部分も短いので、ストーリーの把握なんて夢のまた夢という年も多々あります。

 

それでいてセンター古文の内容って昼ドラもびっくりということも多くて結構興味をそそるんですよ(笑)

高3当時の私は、問題の前後の内容が気になりつつも深堀する時間がなくて、泣く泣く次の年の過去問に取り掛かっていました。

 

そこで!

私と同じようにセンター古文を読んでモヤッとしている高校生に向けて、出題された物語のあらすじや登場人物など問題本文を楽しむために必要な知識をお話したいと思っています。

直接点数につながるような問題の解説は一切しませんので、悪しからず。

 

でも、個人的には文法や古文と同じくらい、時代背景や当時の生活への理解は重要だと思っています。

少しでも時代背景などのいわゆる古文常識にも興味を持ってくれたらうれしいです。

 

さて、初回は2007年の「兵部卿物語」です。

 

登場人物

兵部卿宮

まず、この兵部卿という名前。

古文ではこの「兵部卿さん」と言う人がよく出てきます。有名なところでは、源氏物語。なんと3人もの兵部卿が登場します。

 

なんでそんなことになったのかというと…

「兵部卿」というの元々役職名の一つで、名前がはっきりしない皇子を呼ぶあだ名のようなものだから、です。

 

兵部というのは兵士や軍に関することを司る役所のことです。

その兵部の長官である兵部卿という役職には、帝ではない皇族の男性(皇子)が就いていました。

だから「兵部卿」と呼ばれていればその人は皇族男性(皇子)だと読者に伝わるわけです。

 

ということで、前置きが長くなりましたが、この「兵部卿物語」にも「兵部卿宮」…とある皇子様が登場します。

(「宮」というのも皇族を表す言葉のひとつですね。)

 

この兵部卿宮は、従妹の式部卿宮姫君に叶わぬ恋をしていました。

ところがその恋は叶いません…。そこで、式部卿宮姫君に似た按察使大納言女と恋仲になります。

しかし按察使大納言女も兵部卿宮の前から姿を消してしまいます。

兵部卿宮は、仕方なく別の女性と政略結婚することになります。とことん恋愛運に恵まれないですね。

 

政略結婚した相手とはそれなりに仲良く幸せに過ごしはじめようやく幸せが訪れたかのように思いますが、そこで波乱が起こるわけです。

 

按擦使大納言女=按擦使の君

片思いに苦しむ兵部卿の前に現れたのが、式部卿宮姫君にそっくりな按察使大納言女(あぜちだいなごんのむすめ)です。

兵部卿宮は按察使大納言女に惹かれていき、やがてふたりは恋仲になります。

 

按察使というのは、地方行政を監督する仕事で中級貴族が就く役職です。

その娘なので兵部卿宮や式部卿宮姫君といった皇族と比べたら下位の貴族と言うことになります。とは言え、大納言の娘なので決して低い身分ではありません。専属の侍従や乳母もいる中流貴族です。

 

右大臣の姫君のもとで女房として働くことになった時にも、姫君と直接お話しできる立場として迎えられます。ちなみに按擦知大納言女は、右大臣の姫君のところでは按擦使の君と呼ばれます。

 

作中には按察使大納言女の書いた詩が登場しますが、その内容からも彼女が機転の利く女性だったことが伝わってきます。恋愛面では苦しむことも多いのですがいつも理性的な判断を下していることからも、きっと理知的で魅力的な女性だったのでしょう。

 

式部卿宮姫君

兵部卿宮の初恋の君です。

 

式部というのは宮中の人事を司る役所です。その長官の式部卿も兵部卿同様に皇族が勤めていました。式部卿宮姫君は「式部卿の娘」のことです。ここでも、役職名が個人を表しています。

 

この当時、皇族の女性は恋愛できないのが一般的でした。式部卿宮姫君も斎院に選ばれて神に仕えることとなります。

(斎院というのは、京都の上賀茂神社や下鴨神社にお仕えするお役目で、未婚の皇族女性が務めていました。)

 

右大臣の姫君

右大臣は、皇族以外の貴族では太政大臣と左大臣に次ぐ上位の役職で、藤原家のような有力な貴族が務めます。権力を持つために帝や皇族と婚姻関係を結ぶということも多く行われていました。特に、太政大臣、左大臣、右大臣は権力を争うことが多く、競い合うように帝や皇子に女の子を嫁がせていました。

 

そんな右大臣の娘である姫君に、皇子である兵部卿宮との政略結婚話が持ち上がるわけです。政略結婚ではありましたが、昼夜構わずマメに通ってくる兵部卿宮に好意を持っていたようです。うまく描けなかった絵を墨で塗りつぶして隠してしまったり、美しく上品でかわいらしい一面も持つ姫君です。

 

乳母

〇〇〇〇

 

その他の登場人物

他にも蔵人や侍従が出てきます。今回はお付きの人と理解できていればいいと思います。

 

 

古文マメ知識 呼び名

「古文は役職が呼び名になっていることが多いので混乱する!」と思っていませんか?

 

役職名が個人を指すのは古文の中だけではないんですよ。

 

例えば、「校長先生」のことを名前で呼んでいる人はあまりいませんよね??部活でも「キャプテン」とか「部長」で十分伝わりますよね。

学校や部活などのコミュニティの中で通じ合えば、役職名が個人を指すことは今でもあることなんですよ。

 

誰もが知っている昔話の桃太郎でも、「おじいさん」「おばあさん」と言えばそれだけで誰のことを指すのか伝わりますよね。

だから兵部卿宮や大納言という呼び名が来た時も、慌てず焦らず対応したいところです。

そのためにも、必要最低限の職位を表す表現は覚えることをお勧めします。貴族の位についてはまた機会があれば説明したいと思います。

あらすじ

では、お話の内容に入りましょう。

 

兵部卿宮は従妹の式部卿宮姫君に恋をします。

 

しかし式部卿宮姫君にとって兵部卿宮は兄弟のような存在です。恋愛関係になることは叶いませんでした。傷心の兵部卿宮は出かけた先で、式部卿宮姫君によく似た按察使大納言女を見かけて新しい恋に落ちます。しかし、そこには身分差が…。兵部卿宮は、自分よりも身分が低い按察使大納言女と釣り合うように中納言と身分を偽って、こっそり按察使大納言女のところに通い、やがてふたりは恋仲になります。

 

ふたりの仲は順調でしたが、按察使大納言女に出仕(身分の高い女性に使えること)の話が持ち上がります。兵部卿宮との恋愛のこともあって、按察使大納言女は出仕の話を断ります。出仕したら、今のような恋愛を続けるわけにはいかなくなってしまいますからね。

 

そんなあるとき、式部卿宮姫君が斎院となることが決まります。兵部卿宮は、式部卿宮姫君に完全に手が届かなくなってしまうことを知って落ち込みます。按察使大納言女とお付き合いを始めていたのに、勝手な人です。なんとなく気分が乗らなくて按察使大納言女の家から足が遠のきます。

更にその頃、兵部卿宮に右大臣の姫君との縁談が持ちあがります。

 

按察使大納言女の方でも乳母の死という悲しい出来事があり、再三の出仕要請をとうとう受け入れます。そこに兵部卿宮が再び現れ二人は心を通わせますが、時すでに遅し。すでに出仕が決まっていた按察使大納言女は兵部卿宮の前から姿を消します。

 

ここからが、波乱の幕開けです!

按察使大納言女の出仕先はなんと右大臣の姫君、兵部卿宮の縁談のお相手のところだったんです。この時、按察使大納言女は自分の恋の相手を中納言だと思い込んでいるので、まさか自分の元恋人が右大臣の姫君の夫だとは夢にも思っていません。わかっていたら、きっと按察使大納言女は右大臣の姫君のもとに出仕しなかったでしょう…。

 

右大臣の姫君の家で、按察使大納言女は大歓待されて「按察使の君」と呼ばれるようになります。

(ややこしいので、ここでは按察使大納言女と呼びますね!)

 

さあ、ここからがセンター出題箇所。

右大臣の姫君のところで働く按察使大納言女は、ある日右大臣の姫君の夫である兵部卿宮が自分の恋の相手の中納言にそっくりだと気が付きます。出仕前から自分に仕えている侍従も、兵部卿宮の付き人と中納言の付き人が同一人物だと言います。賢い按察使大納言女はすべてを察して、兵部卿宮に会わないよう避けるようになります。周囲から怪しまれないように気を配りながら兵部卿宮を避けるのも大変で、按察使大納言女は神経をすり減らします。

 

そんなある日、右大臣の姫君と按察使大納言女を含む数人の女房たちが遊んでいました。右大臣の姫君は絵を描きましたがうまく描けなかったので絵を塗りつぶしてしまいます。その失敗した絵の隣に按察使大納言女が歌を添え書いていると、突然兵部卿宮がやってきます。按察使大納言女は慌ててその場を片付けてほかの女房たちと一緒に退出しますが、急いでいたので先ほどの絵と歌を書き添えた紙を部屋に残してしまいます。

 

何気なくその紙を見た兵部卿宮は、絵に書き添えてある歌の筆跡がかつての恋人のものであることに気が付いてしまいます。姿を消した恋人がまさか結婚相手に仕えているなんて…。びっくりしますよね。兵部卿宮は驚きを隠して右大臣の姫君に怪しまれないように、歌を書いた女房の正体を確かめます。そして、按察使大納言女が右大臣の姫君に仕えていることを知ってしまいます。

 

このとき右大臣の姫君は幼稚な遊びをしていたことを兵部卿宮に知られたくなくて、兵部卿宮の質問を知らんぷりするんですが、その様子がなんともかわいらしくて大好きなシーンです。

 

さて、按察使大納言女が右大臣の姫君のもとにいるを確信した兵部卿宮は、この後どうするのか…!?

というところでセンターの問題は終わってしまいます。

 

この後、兵部卿宮は按察使大納言女のことを直接見て確かめてから部屋に忍び込みます。

按察使大納言女としては、自分の仕える主人の夫が訪ねてくるわけだから心中穏やかではありません…。上司の夫と不倫しているようなものですから…いたたまれなかったと思います。思い悩んで死まで考え、とうとう出家してしまいます。

 

それでお話は終わりかと思いきや、兵部卿宮はあきらめません。

出家して尼になった按察使大納言女を追いかけます。なんと尼となった按察使大納言女の部屋にまで侵入しようとするのだからしつこい…いえ、情熱的ですよね。按察使大納言女は更に山奥の寺へ逃げ込み、ようやく仏道修行の静かな日々を送ることができました。

 

よくよく考えてみると、兵部卿宮をはじめ、斎院になった式部卿宮姫君、出家した按察使大納言女、夫が他の女性のもとに走ってしまった右大臣の姫君…誰も幸せにならない悲恋ストーリーです。兵部卿宮は自業自得な気もしますが…。いつの世も、世間は悲恋物語が好きだということですね。

 

 

古文まめ知識 逆玉婚が当たり前!?身分と恋愛の話

平安時代は男性が結婚した女性の家に通う「通い婚」だったというのは聞いたことがありますか?女性のもとに男性が通って、女性自身、そして女性の両親に受け入れられると結婚が成立します。本人同士の了承だけで結婚できないのは、現代から見ると窮屈に思えますよね。

 

でも当時は結婚した男性の生活費を女性の家が出すのが常識だったので、お金を出す両親からの許可も必要だったんです。男性は良い暮らしをするために、身分の高い女性と結婚することを狙うのが一般的でした。逆玉婚ですね。ちなみに結婚後も通い婚を続ける場合もありましたし、出世したり子供が生まれると家を建てて同居を始めたようです。

 

そんなわけで大納言の娘である按察使大納言女の恋の相手として中納言という身分を騙るのがちょうどよかったんですね。

 

もし按察使大納言女が出仕せずに、兵部卿宮が本当の身分を明かしていたらふたりの恋はそこで終わっていたと思います。ふたりの仲が続いたとしても按察使大納言女が兵部卿宮の正室になるのは難しく、側室や愛人としての未来しかなかったのではないでしょうか…。

 

 

まとめ

いかがでしたか?

女性である按察使大納言女が恋愛に溺れずに出家するのに対し、兵部卿宮は後先考えずに尼となった按察使大納言女を追いかけます

。出家した先まで追跡するとはストーカー気質…ではなくて、情が深いんでしょうね。兵部卿宮に限らず、恋愛体質の男性が古典文学には多く登場します。

2010年には、各所で話題になった?「恋路ゆかしき大将」も出題されました。センター古文史上最大の問題作と言われているのですが…、とりあえず次回は2008年「狗張子」を解説したいと思います。お楽しみに!

 

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