【千里山教室】走るなメロス
JUGEMテーマ:教育
『走れメロス』はちょうど中2の今頃に学習するところが多いと思います。
無二の友に許可を取らず勝手に人質にしたり、最後メロスは全裸だったりと、突っ込みどころの多いこの作品。
ここに書かれている文章を真面目に考えるとどうなるのだろうか。
ということで今回抜粋するのは、メロスが水を飲み恢復し、走り出したこの部分。
路行く人を押しのけ、跳ねとばし、メロスは黒い風のように走った。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駆け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、犬を蹴とばし、小川を飛び越え、少しづつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。(太宰治 著『走れメロス』より引用)
路行く人を蹴とばしたり、犬を蹴とばしたりと、正義のために走っているとは、とても他人からは思われないであろう行為をしているメロスですが、特に問題なのは、最後の沈みゆく太陽の10倍も早く走っている点です。
もちろん、これはあくまで文章としての表現です。これくらい早く走りましたよ。ということですね。
しかし、あえて真面目に、この文章を言葉の意味のままに受け取ってみましょう。
つまり、本当にメロスが「沈みゆく太陽の10倍」の速度で走ったと考えるのです。どれくらいの速度になるのでしょうか。
太陽の沈む速さを計算してみよう
太陽は実際には動いていませんので、太陽の沈む速さは、地球が自転している速度と同じ、ということになります。
地球のちょうど真ん中、赤道の長さは4万キロです。地球の自転は1日に1回、つまり24時間で4万キロ分回転する速度。ということになります。計算してみましょう
40000(km)÷24(時間)≒1667 (km/時間)
つまり時速約1700kmで地球は回転している。ということですね。それは、太陽の沈む速度も時速約1700kmである。ということです。
これは新幹線のおよそ6倍です……あれ……メロスはこの10倍……ですよね!?
てことはなんですか!?
新幹線の60倍ということですか!?
そうなると、どんだけ遠いんですかね。メロスの故郷。ちなみにこの速度で走ると、大阪ー東京 は2分で行けます。地球を一周するにしても2時間30分ほど。
メロスが走り出したのが夕方だとすると太陽が沈みきってはいないので、だいたい1時間ぐらいは走っていたのではないかと思います。そうすると1万7000キロですから、東京からブラジルがちょうどそのくらいです。
地球の裏側です。なんか、途中の濁流とかどうでもよくなってきました。大海原を突っ切ってますよ。まぁこの速度なら海の上走れそうです。尋常じゃない脚力ですし。
そもそも、この、音速(時速1200km)をはるかに超えている速度でメロスが移動すると、地球はその衝撃できっと壊滅するでしょうね……
走るなメロス